ソーシャルスキルトレーニングを子どもたちに教える中で、ふと立ち止まる瞬間があります。
本当に、自分はこれを伝えられるだけの力があるんだろうか?
私は自分のソーシャルスキルが高いとは思っていません。
むしろ、語彙が少なかったり、自分の気持ちを整理できなかったり、緊張や不安から思わぬ言葉を使ってしまい、相手を傷つけてしまうこともあります。
「そんなつもりじゃなかったのに…」という後悔。
それでも私は、こう思うようになりました。
だからこそ、子どもたちの気持ちが、少しわかるんじゃないか。
自分自身の体験から気づいたこと
授業中、子どもたちに「こういうとき、どう言えばいいかな?」と問いかけると、黙り込む子がいます。
それはただ「知らないから」ではなく、
• 「間違えたらどうしよう」
• 「うまく言えないかも」
• 「何か言って嫌われたら…」
という心の中の不安や緊張が原因であることも多いのです。
その気持ちは、私自身がよく知っています。
思いを言葉にするって、簡単なことじゃない。
特に、心が揺れているときは。
ある日の失敗をきっかけに、私は気づきました。
ソーシャルスキルは「心の状態」と深く結びついている。
ソーシャルスキルトレーニングでできることは「安心の土台づくり」
ソーシャルスキルトレーニングというと、「あいさつの練習」や「断り方」などが思い浮かびますよね。
もちろんそれも大切ですが、私は今、もっと大切なことがあると感じています。
それは、心理的な安心の場をつくることです。
たとえば、こんな声かけを意識しています。
• 否定しない:「ちがうでしょ」ではなく「そういう考え方もあるね」
• 比べない:「○○さんはできてるのに」ではなく「あなたのペースでいいよ」
• 急がせない:「早く言って!」ではなく「ゆっくりでいいよ、待ってるね」
先生の姿勢ひとつで、子どもの緊張はずいぶん変わります。
子どもが安心して間違えられる環境は、何よりの学びの場です。
自分にも子どもにもできる「小さな安心」のつくり方
私が普段心がけている、具体的な工夫をご紹介します。
◆ 深呼吸をする
話す前に、一呼吸。子どもと一緒に「せーの」で深呼吸をすると、自然と場が落ち着きます。
◆ アイコンタクトを大切にする
無理に目を合わせさせる必要はありませんが、先生から穏やかな目線を送るだけでも「大丈夫」のメッセージになります。
◆ 「先生もちょっと緊張するよ」と言ってみる
子どもは先生が完璧に見えることがあります。あえて自分の緊張を伝えることで、「自分だけじゃない」と安心感が生まれます。
◆ うまくできたら一緒に喜ぶ
たとえば、「ありがとう」が言えたときは、すぐに反応して「今の、すごく伝わったよ!」と伝えています。小さな成功体験が大きな自信になります。
まとめ:完璧じゃなくても、伝えられることがある
ソーシャルスキルを教える側でも、日々不安や迷いを感じることはあります
でも、それを経験しているからこそ、伝えられることがある。
「先生だって失敗するよ」
「でもまた一緒に考えようね」
そんな言葉をかけられる先生の存在は、子どもたちにとってかけがえのない心の支えになります。
私たちは、完璧なロールモデルでなくていい。
共に生き、共に学び、共に進んでいく存在でいればいい。
その小さな歩みが、きっと子どもたちの未来につながっていきます。
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