〜“回復のプロセス”に寄り添うという選択〜
はじめに 〜親として、願わずにはいられない気持ち〜
不登校が始まってしばらく経つと、多くの保護者の心に浮かぶ願いがあります。
「そろそろ、学校に戻ってくれるかな…」
「少し元気そうに見えるし、行ってみたらどうかな…」
「勉強が遅れてしまうのでは…」
前回の記事では、「不登校初期に親ができる3つのこと」として、まずは“安心できる環境を整える”ことの大切さをお伝えしました。
でも、時間が経つにつれて、「このままでいいのか」という気持ちが湧いてくるのもまた自然なことです。そして、「どうしたらいいか分からない」という不安も同時に大きくなりがちです。
今回は、そんな「学校復帰を願う気持ち」とどう向き合い、子どもの回復のプロセスにどう寄り添っていくかについて、一緒に考えてみたいと思います。
学校に戻ることが「ゴール」ではない
最初にお伝えしたいのは、「学校に戻ること=回復」ではないということです。
確かに、学校に戻って元気に通えるようになることは喜ばしいことです。でも、「ただ出席できればいい」という考え方は、子どもにとっては大きなプレッシャーになることがあります。
本当に大切なのは、“本人が納得して・安心して・継続的に通えるようになること”です。
無理に戻してまた行けなくなったり、我慢しながら学校へ行くことになったりすると、さらに深い不安や抵抗感を育ててしまう可能性もあります。例えば、無理に登校させてしまうと、学校や学習へのさらなる抵抗感を生んだり、親子関係が悪化したりするリスクがあります。大人が“正解”を急ぐことで、子どもの回復の芽をつぶしてしまうことがあるのです。
親ができる「3つの視点」〜焦らず・責めず・見失わず〜
それでは、学校に戻ってほしいと願うときに、親が意識したい3つの視点をご紹介します。
① 【焦らず】回復には“波”があることを知る
不登校の子どもたちの回復には、段階と波があります。その波を理解することが、親の心の余裕につながります。
よくある回復の段階はこんなふうに表されます。
- 【疲弊期】学校に行けなくなり、心身ともに疲れ切っている
(親の関わり:徹底的に休ませる、安心できる空間を作る) - 【休息期】家で安心し、エネルギーを回復していく
(親の関わり:否定せず見守る、子どもの“好き”に寄り添う) - 【模索期】やってみたい気持ちと不安が交錯する
(親の関わり:子どもの小さな変化を認め、共感する) - 【再始動期】少しずつ外の世界に向けて動き始める
(親の関わり:次のステップに向けて一緒に情報を集める)
でもこの回復は、直線ではなく“行きつ戻りつ”です。

調子がよくなったように見えても、また落ち込んだり、休みたくなったりするのは当たり前です。それは後退ではなく、回復のための大切なステップです。
焦って「この機会に行かせよう!」と思わずに、「また少し疲れたかな?」「今は休息が必要なんだな」と見守る視点がとても大切です。
② 【責めず】「どうして行けないの?」と詰めない
親としては、「なぜ行かないの?」「何が嫌なの?」と理由を聞きたくなることもあるでしょう。しかし、本人にとっては「うまく言語化できない」「理由が自分でも分からない」ことがほとんどです。
子ども自身も混乱している最中であり、感情を言語化する力がまだ十分に育っていないことも多いのです。
責めるつもりがなくても、「理由を聞く」ことがプレッシャーになる場合もあります。それよりも、
- 「今はまだしんどいんだね」
- 「行こうと思ったけど、無理しないでえらいよ」
- 「今日は家でゆっくりしていいよ」
など、“今の気持ち”を認め、安心感を与える声かけをしていくことが大切です。
例えば、「休めてホッとした?」「今日はおうちで何をして過ごしたい?」など、子どもの気持ちに寄り添い、安心感を与える質問を試してみてください。

本人が少しずつ気持ちを言葉にできるようになるには、まずは「理解してくれる存在」が必要です。その存在が親であることは、子どもにとって非常に心強いものです。
③ 【見失わず】“学校以外の道”にも目を向ける
親として「学校に戻ってほしい」と願うのは、ごく自然なことです。しかし、子どもの成長や学びの場は、学校だけではないという視点も、少しずつ取り入れていけたらと思います。
たとえば、以下のような選択肢があります。
- フリースクールやオンラインスクール:多様なカリキュラムや居場所を提供し、その子に合った学びのペースを見つけやすい。
- 教育支援センター(適応指導教室):専門のスタッフが見守る中で、段階的な登校練習や学習支援を受けられる。
- 通級や支援学級への転籍:発達特性や感覚過敏などの背景がある場合に、よりきめ細やかなサポートを受け、安心して学習できる。
- ホームスクーリングや家庭学習スタイル:自宅を拠点に、子どもが興味を持ったことを深く探求したり、ペースを大切に学んだりできる。
こうした道は、けっして“妥協”ではありません。「その子に合った学び方」「安心して育つ場所」として大切な選択肢です。
フリースクールについては、こちらの記事に詳しくまとめています。👇
支援学級での不登校対応については、こちらの記事を参考にしてください。👇
大切なのは、「学校に戻すこと」ではなく、「この子が自分らしく、幸せに学べる場所と方法を一緒に探すこと」です。見失わずに、少しずつ視野を広げていきましょう。
保護者の気持ちも「揺れていい」
子どもを思うからこそ、迷いますよね。
- 「今日は無理にでも行かせた方がいいのかな」
- 「甘やかしているように見えるのでは」
- 「このまま引きこもりになってしまったら…」
そんな気持ちが出てくるのも当然です。でも、それを「悪い親だから」と責めないでください。揺れるのは、子どもを思っている証拠です。
大切なのは、「揺れること」そのものよりも、その都度、立ち止まり、見直し、選び直していく力です。そうした不安を感じた時は、信頼できる人に話したり、このブログのような情報源を活用したりして、一人で抱え込まないでください。
このブログでは、そんな“迷いながら進む親”の伴走者でありたいと思っています。
まとめ 〜学校に戻ってほしいと思ったら〜
本記事では、「学校に戻ってほしい」と願うときに親が意識したい3つの視点をお伝えしました。
親が持ちたい3つの視点
- 【焦らず】回復には“波”があることを理解する
- 【責めず】「どうして?」ではなく「今の気持ち」に寄り添う
- 【見失わず】学校以外の選択肢にも目を向ける
学校復帰は“ゴール”ではなく、“いくつかある選択肢のひとつ”です。
大切なのは、「この子が安心して成長していける場所と方法を、一緒に探していくこと」です。子どもは親が思っている以上に、自分の力で立ち直る力を持っています。
次回は、「学校に行かない選択は“逃げ”じゃない。フリースクール・通級・支援学級の違いと選び方」という視点から、学校外の学び場・安心の場について具体的に紹介していく予定です。
不登校と支援学級は関わりが深いです。視点を変えるきっかけになるかもしれません👇
おわりに 〜親も子も、“信じていい”〜
子どもたちは、ゆっくりでも、確実に、自分のペースで立ち直る力を持っています。
そして、親もまた、「一緒に考えてくれる誰か」がいることで、安心して進むことができます。
このブログが、そんな“誰か”のひとりになれたら嬉しいです。
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