特別支援学級はずるい?不公平だと思われる5つの理由

支援の工夫

「特別支援学級って、なんだかずるくない?」

もし、あなたのお子さんが、あるいは保護者の方から、こんな声を聞いたとしたら、あなたはどう答えますか?

特別支援教育に携わる私たちにとって、この声は決して無視できない、大切な問いです。

この記事では、

なぜ「ずるい」「不公平」と感じてしまうのか、その具体的な理由を丁寧に整理しながら、特別支援学級の真の目的と、私たちが目指すべき共生社会のあり方について、一緒に深く考えていきたいと思います。


「ずるい」と感じるのはどんなとき?

まず、どんな場面で「ずるい」と感じられるのか、実際にあった声をご紹介します。

  • 「特別支援の子だけタブレットを使っていて、僕も使いたいのにって思った」(小学4年生)
  • 「毎日教室に来なくてもいいなんて、あの子ばかり楽そうでずるいよ」(中学生)
  • 「支援学級の子ばかり手厚くサポートされていて、うちの子にはそこまで手がかかっていないのに、不公平じゃないかと思います」(保護者)

一見、こうした声には“うらやましさ”や“比較からくる違和感”が込められています。では、なぜそう感じるのでしょうか?


不公平だと思われる5つの理由

手厚い支援は「特別扱い」に見えるから

特別支援学級では、児童・生徒一人ひとりの困りごとに応じた個別対応が行われます。支援員や教員の人数も多く、教材や教具も工夫されたものが用意されます。これが、通常学級の子どもから見ると「優遇されている」「特別扱いだ」と感じられてしまうことがあります。

評価の基準が違うから 支援学級では、到達度に応じた個別の評価が行われます。これが、「あの子は同じテストを受けていないのに高評価をもらっている」と映り、「自分たちと比べて不公平だ」という感情につながることがあります。

授業や行事の参加が「選べる」ように見えるから

支援学級の子どもは、その子の状態に応じて通常学級との交流や授業参加の頻度を選ぶことがあります。これを「自分たちは全部出なきゃいけないのに、ずるい」と感じる子もいます。

苦手なことを「免除されている」ように見えるから

たとえば、体育や音楽の授業で難しい内容を別メニューにしていると、「苦手なことをやらなくていいなんて、ずるいじゃないか…」という声が出ることもあります。

支援が「楽そう」に見えるから

見た目の支援(別教室での活動、補助の先生がつく、休憩が多いなど)が、「勉強しなくてもいい」「ラクしている」ように誤解されてしまうことがあります。通常学級の子どもからすれば、頑張っている自分たちと比べて「ずるい」と感じてしまうのは無理もないのかもしれません。


なぜ「ずるい」と感じるのか?心理的背景

これらの声の奥には、「自分と比べて損をしている気がする」という心理があります。

子どもも大人も、自分の努力や頑張りが報われていないと感じたとき、他者が受けている支援や配慮に対して、つい敏感になってしまう傾向があります。

特に小学生〜中学生の時期は、「みんな同じじゃないと不公平」と感じやすい年頃です。自分と他者の違いや多様性をまだ十分に理解する前に、「自分との違い=不平等」と捉えてしまうのは、ある意味、自然な心の動きと言えるでしょう。


支援学級は“ずるい”のか?実態を知る

では、支援学級に通う子どもたちは本当に「楽をしている」のでしょうか?

実際には、毎日がチャレンジの連続

「楽をしている」どころか、特別支援学級に通う子どもたちは、毎日が小さな、しかし大きな困難との闘いです。発達障害や知的障害など、それぞれに抱える困り感や生きづらさは多岐にわたります。例えば、

  • 特定の音に過敏で、教室のざわめきが苦痛に感じる子
  • 文字を読むことに人一倍時間がかかり、宿題が終わらない子
  • 友達との関係づくりに戸惑い、孤立感を感じる子
  • 感情のコントロールが難しく、衝動的な行動が出てしまう子

など、彼らにとって学校生活は、私たちが想像する以上に多くの努力と不安に満ちています。人よりも「頑張ってようやく普通に見える」という状況も決して珍しくありません。

個別の学びは「特別」ではなく「必要不可欠」

一見“特別”に見える支援は、その子にとって学校生活を送り、平等に学ぶために必要不可欠な「環境調整」や「合理的配慮」です。これは「優遇」などではなく、それぞれの発達段階や特性に応じた「公平な学びの機会」を提供するための工夫なのです。

例えば、視力が悪い子がメガネをかけること、車椅子の人がスロープを使うことと同じように、個々の困り感に合わせて必要なサポートをすることで、誰もが学びやすい環境を整えている、と考えることができます。


誤解をなくすためにできること

子どもたちへの説明と対話

学級や学年で、「人によって必要なサポートが違うこと」「違いを認め合い、お互いを尊重すること」の大切さを、年齢に応じて具体的に伝えていくことが大切です。例えば、「困っている人がいたら助けるのは当たり前だよね?」「メガネをかけるのと同じで、みんなそれぞれ得意なことや苦手なことがあるんだよ」といった身近な例を交えながら、繰り返し対話する機会を設けましょう。

保護者との連携

保護者が「なぜ支援が必要なのか」「どのような支援が行われているのか」を正しく理解できていれば、ご家庭での子どもへの声かけも変わってきます。学校だよりや面談、説明会などを通じて、支援学級の目的や具体的な取り組みを丁寧に伝え、学校全体で子どもたちの多様性を支える姿勢を示していきましょう。

教員の工夫と柔軟さ

通常学級でも必要な配慮が行き届いているか、支援学級と通常学級の情報共有が密にできているか、常に見直していくことが大切です。全ての教員が特別支援教育への理解を深め、一人ひとりの子どもに目を向ける視点を持つことで、学校全体のインクルーシブ教育が進みます。


まとめ:支援はえこひいきではない

「ずるい」という言葉の背景には、「自分と比べて不利だ」と感じる素直な気持ちが隠れています。その感情に蓋をせず、丁寧に向き合うことで、「支援とは何か」「公平とは何か」「多様性とは何か」を深く学ぶ貴重な機会に変えることができます。

特別支援教育は、“誰かを特別扱いするため”にあるのではなく、“みんなが安心して学ぶため”の仕組みです。

その意味を、子どもにも大人にも伝え続けていきたいと思います。


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